2023.5.17【ファインディングネバーランド】感想 来日版との比較 @新国立中劇場 

2023年5月17日(水)

ホリプロ【ミュージカル ファインディングネバーランド】

@新国立劇場 中劇場 マチネ

主なキャスト

・ジェームズ・バリ:山崎育三郎

・シルヴィア・デイヴィス:濱田めぐみ

・フック船長/チャールズ・フローマン:武田真治

・メアリー・バリ:夢咲ねね

・デュ・モーリエ夫人:杜けあき

子役キャスト

・ジョージ:越永健太郎 / ポピエルマレック健太朗

・ジャック:生出真太郎 / 豊田侑泉

・ピーター小野桜介 / 長谷川悠大

・マイケル奥田奏太 / 谷慶人

子役は全てWキャスト。「PLAY」チームと「BELIEVE」チームに分かれています。

今回は「PYAY」チームを観劇。

あらすじ

19世紀後半のイギリス。新作戯曲が書けずに行き詰まっていた劇作家ジェームズ・バリ(山崎育三郎)は、公園で、未亡人シルヴィア(濱田めぐみ)と4人の子ども達ジョージ、ジャック、ピーター、マイケルと出逢う。

妻のメアリー(夢咲ねね)からも問い詰められ悩んでいたバリだったが、彼らと遊ぶうちに純粋で正直な気持ちを思い出し、「演劇」も「遊び」も同じ「PLAY」なのだと気がつき、物語をどんどん生み出していく。

しかし、当時のイギリスでは、演劇は上流階級だけのもので、バリが「子供も楽しめるファンタジー作品を上演したい」と提案すると、劇場主のフローマン(武田真治)と劇団員たちは猛反対。

一方、父を亡くしてから純粋な心を閉ざし”大人”になろうとしていた三男のピーターは、バリと交流を深めるうちに、夢や希望を捨てることが大人になることではないのだと悟る。バリとシルヴィアは、シルヴィアの母のデュ・モーリエ夫人(杜けあき)に反対されながらも交流を深め、お互いを理解し心を開く関係になっていく。こうしてバリは、シルヴィアと子供たちと一緒に空想した世界を基に『ピーターパン』の物語を作りあげていく。

最初は反対していた劇団員たちも、次第に子供の頃の純粋な気持ちを思い出し、バリの描く世界に引き込まれていく。順風満帆かに思えたが、シルヴィアの体調が悪化し、バリと兄弟たちは新たな試練に直面することになる。そして迎えた新作舞台『ピーターパン』の公演初日。

『ピーターパン』という永遠の物語を生み出した一人の作家と、彼を囲む人々の、美しく、優しく、切ない、感動の物語。

~公式サイトより抜粋~

作品について

 言わずと知れた「ピーターパン」。の、作者がいかにしてピーターパンを作ったか、というお話。

ピーターパンの作者の話といえば、日本では2005年に公開された、ジョニー・デップ主演の同タイトルの映画(邦題「ネバーランド」)が有名

ミュージカルファインディングネバーランドは、この映画と、アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』を元にして創られています。

日本では、2017年に東急シアターオーブでツアー版が来日上演されました

私はこの時の公演を観劇していて、とにかく大好きな作品。

制作発表の時、2年後に向けて日本版の上演が「石丸幹事さん主演」で発表されていたのですが、「版権の都合」で上演の話は水に流れてしまっていました((´・ω・`)ショボン

詳しいことは分からないのですが、「版権問題」とか言われたらもう一生「日本語版」は観れないんだ…と諦めていました。

なので、今回製作が発表された時は狂喜乱舞

舞って喜び、「もうすぐ仕組みが変わるよ」と言っているにも関わらずホリプロプレミアムに入会。 すべてはファインディングネバーランドのためにッ!!!

今回は、日本版として演出も新しくなっています。

感想(ネタバレあり)

 結論から言うと、めちゃくちゃ良かった。

安心と信頼の大号泣

観劇中にあんまり泣くと、終わってから頭痛くなるので

出来る限り控えめに…と思っているですが、無理。これに関しては無理でした。

座席も最高だったので、キャストさんたちがボロボロ泣いたり、涙をこらえてウルウルしているのがクッキリ、ハッキリ見えてしまい、これで「泣くな!!」といわれたらもはや拷問。

涙をこらえる拷問か、頭痛という名の拷問か。

「頭痛」をとった。

大号泣。

いやぁ、よかった。

とはいえ、来日版からのファンとしては、やっぱり気になる点もいくつか。

1,日本が綺麗にならない

2,ラストシーンの変更

ここが2台巨頭かな。致し方なし!!

それでも、このページを加筆修正している時点で3公演観終わっていて、見る度に「違和感」は薄れていきました。

実際、日本版が初見であれば、特に「おかしいな」と思うところはないと思います。

そういうもんかもね。

逆に、日本版で新しく演出を変えて、素晴らしかった点もあります。

「♬What You Mean to Meの影による演出が大幅に変更されていたのですが、

これは、もう「尊くなった!!!!」

日本ぽくなった!ともいえるかもしれませんが、とにかく大好きなシーンになりました。

 その辺りも踏まえて、今回は記憶とメモの中の「来日版」との違いを書き出しながら、感想綴ります。

オープニング

幕が上がる前のオープニング。来日版では「ティンカーベル」(ライト)が緞帳の前を飛ぶ演出でした。

ライトとか言うな!!!思った方、ごめんなさい(笑)

便宜上ですwww

日本版では、先に幕が上がって座り込むピーターの周りをティンクが飛び交います。

この「緞帳の前を飛ぶ」やつ、好きだったから…変更になってて少し寂しい。

オーバーチュアで表題曲の「NEVERLAND」が流れて、ティンカーベルが瞬き出すと、ついつい客席から目で追いかかてしまって、気付いたら吸い込まれるように幕の向こう側に誘われる感じ。

その世界に誘われる、みたいな日本語が合うかも。

まさに「ネバーランドに連れていかれる時って、こんな感じかも…と思わせるはじまり方で、好きでした。

BELEIVEのクマさんと歌い出し

 意外と驚いたのが「♬BELEIVE」で、バリの飼い犬「ポルトス」が、想像の中で歌って踊るクマに変身するシーン。

来日版では、バリバリの着ぐるみがローラースケートに乗って、踊っていました。

これが、普通に黒い毛むくじゃらの人間になってて笑った。

しかも同じ衣装のままで、ケンジントン公演歩いてたりしていた人なので、流石に手抜き過ぎでは!?www

 同じく「♬BELEIVE」で思ったこと。歌い出しが確かシルヴィアと記憶していたのだけど、バリがピーターに語り掛ける歌い出しでした。

ちょっと記憶が曖昧なのですが‥‥個人的には【シルヴィアがピーターに語り掛けることをきっかけに、バリの中の想像力に火が付いたシーン】みたいに覚えていたので、「あれ???」という違和感。

当時は英語が追いかけきれていないし、細かいニュアンスは分からないのですが…どちらが歌い出すかで割と意味合いが変わるかな、と思いました。

今回はバリの歌い出しに、すぐにシルヴィアが共鳴する形になっています。

フライング

ファインディングネバーランドでは、子どもたちが空を飛ぶシーンを【リフト】で表現しています。

黒子さんが「おりゃー!」っと持ち上げているんですよね。 

すごい力よ…。

このフライングシーンは、大きく2回あります。

一つは、子どもたちが寝室で「まだ眠くな~い」とはしゃぐシーン。

ベッドの上で飛び跳ねる子どもたちを見たバリが、【子どもたちが空を飛んでいるように見える】と感じます。

バリの空想の世界に切り替わるので、部屋いっぱいが夜空になり、動きがスローになった子どもたちが宙を舞うのですが、、、、日本人のパワー不足よwww

もう一つが、ピーターパンの上演シーン。

ピーターパンとウェンディのフライングをリフトしていくシーン。

外人さんって、ムキムキだもんね…(笑)

そうだよね、大変だよね。 来日でさらりとやっていたことの大変さを感じたシーンでした

♬NEVERLAND

みんな大好き表題曲のNEVERLAND」

私はこの曲からファインディングネバーランドにハマりました。

初見の作品をわざわざ「来日公演」で観に行くなんてこと、やったことが無かったのですが、当時「NEVERLAND」の歌唱動画があがったのをたまたま見つけて、

ずきゅ―――――――――――――――――――――ン。

本当にこの曲からこの作品を好きになったんですよね。

観劇前に、ホリプロ公式がYOUTUBEにあげた「製作発表 歌唱披露」の動画をチェックしました。

ビックリした!!!!

ハモが!!!ハモが変わっっとるやないかーーーーーーーーーい!!!!!

当時観たのはコレ↓↓↓

一部を除き、オクターブ違い(?)で歌われていて、ハモリに入るのももっと後ろのタイミングでした。

流石に驚いたぁ。

正直聞いた時は「来日verの方が良いんだが!?!?」と思いました。

綺麗だもん。

でも、実際に劇場で聴いたら、

「そんなことどうでも良かった!!!!!」

と思うくらい号泣しました。

濱田めぐみさんのハモリ方も、歌唱披露時に比べて寄り添うような感じになっていて素敵でした。

また、この歌を劇場で聴ける日が来るとは…。

ありがとう、ホリプロ(合掌)

「♬Storonger」の振り

基本的に、演出を一新しているので、振り付けは全て変わっています。

その中で、いちばん気になったのは「♬Storonger」

来日公演の時も割と前方の席で観たのですが、この「♬Stronger」は凄かった。

迫力、うんぬん!!という話もあるのですが、

リアルに「劇場が揺れてた」www

嘘じゃないよwww

当時は、シアターオーブで上演されていて、もちろん生オケだったのでした。

このオケ音の重低音ドラムが響く、響く。

加えて、「♬Storonger」の振りのなかに【海賊たちが地面を踏み鳴らす】という振りがありました。

このドンッ!!ドンッ!!と劇場を踏み鳴らす音に、ドラムのドンッ!!ドンッ!!が重なって、腹に音が響きながら劇場全体が揺れていたのです。

もしかしたら、前方席だけかもしれませんし、特に狙っていた訳ではないのかもしれませんが、私は

「船が揺れとる!?!!!!?!」

「舵を取れッッ!!!!!!」

と思って感動しました。

荒れ狂う海と、その嵐ににも負けない荒くれ海賊の力強さ。

これ以上ない演出でした。

今回は振りも変わり、ドラム音も弱めで残念…。

あと、ランニングマンみたいな振り付け足されてて、ちょっとダサかった。笑

あと、歌の最後の歌詞が「僕は ストロンガー!!!!」で、ちょっとダサかった。笑

「♬What You Mean to Me」の演出変更が最高

ダサかった、ダサかったと言ってると、私がワルイヤツになってしまうので、今回1番伝えたい「♬What You Mean Me」の演出変更について。

邦題は「♬あなたという存在」。バリにとってシルヴィアが、シルヴィアにとってバリが、お互いにどういう存在なのか、「自分にとってのあなたという存在の意味」が歌われています

来日版では、もう完全に大人なシーンなんですよね。

あれだけ「彼女との間に何かあるわけないだろー!!」と言っていたにも関わらず、ばっちり何かあるシーンです。

上の動画の0:57辺りを見て貰えるとわかるのですが、【バックハグしながら星をゆび指す】振りもあり、ふれあいながら最後には「キス」

フック船長も思わずガッツポーズ!!な楽曲だったのです。

バリとシルヴィアが一緒に居るシーンで、唯一、子どもたちが一緒でないシーンであり、ここでの2人は「男性」と「女性」つまり「大人」に見えます。

「不倫」のような関係性を描きながらも、お互いの「イマジネーション」と「痛み」で繋がっているような2人ですが、ここで確かな「愛」を確認するんですよね。

現実と空想が織りなす舞台の中で、割と生々しい【リアル】なシーンだと思うのです。

ところが、日本版では演出が大きく変わっていて「ハグはなし」「キスも(直接は)しない」!

フック船長もガッカリの楽曲になっていました(笑)。

一方で、ゴーストライトが照らす二人の影が、ピーターパンとウェンディに変わっていき、空を飛びます

影は本物に形をかえて、バリとシルヴィアの周りを駆け回るという演出に。

その間二人は見つめ合いながらも、バリがプレゼントした「どんぐり」を投げてキャッチしながら楽しんでいます。

ピーターパンとウェンディが二人の影に戻った時、二人は見つめ合っていますが、直接的なキスの描写はありません。

バックハグしてキスしてた二人が、どんぐり投げて遊んでるんですよ!?

タイタニックがトトロになったくらいの衝撃です。

とにかく、来日版と一変してめちゃくちゃ【幻想的】で【キレイ】なシーンになっていました!!!

すごく良い!!!!!!!!!

パンフレットの中で、育三郎さんがバリとシルヴィアは「ソウルメイトのような関係」と言っていたのですが、その通りの演出になっているな、と。

俗っぽさを無くして、とことんピュアに。

そして何より、ピーターパンとウェンディがそのままバリとシルヴィアに重なるような演出。

二人の影が動き出した時には、思わず鳥肌が。

日本人ならみんなこっちのほうが好きだろ!!!(偏見)

史実を元にしていますから、現実は旧演出の方に近いのかもしれません。

でもせっかく舞台で観るなら、こっちの方が嬉しいかな。

来日版では特に思い入れがなかったのですが、最高に大好きな一曲になりましたよ。

シルヴィアのラストシーン

これはもう、どうしようもないのかもしれない。

劇場の舞台機構の問題があるのかもしれない。版権の問題なのかもしれない。

分からないのだけれど、ここは死守して欲しかった…。というのが本音です。

日本版の演出も決して悪いわけではありません.。

でも、来日版の演出は群を抜いて美しかったんですよね。

ミュージカルの中に出てくる「人が亡くなるシーン」。

色んな演出があるなかで、ファインディングネバーランドが一番美しかった

普通は、人が亡くなるシーン=悲しいシーン

なのですが、

ファインディングネバーランドの場合

「美しい」のです

その魅力が、今回の日本版ではかなり減ってしまっていて、

ショックでした。

来日版では、下から巻き起こる風に、光の粉(キラキラした紙吹雪?)が舞います。

その中でシルヴィアが風を感じ、最後はピーターパンに誘われて、家の窓から飛び立つ。というシーンでした。

ポスターにもなっているこのシーン。

とにかく「幻想的」。

さらに、シルヴィアがいなくなった後、残された風の中でシルヴィアの上着だけが舞っているシーンは、取り残された人たちの虚しさや、人がひとり居なくなってしまった空間の寂しさみたいなものが際立ちます。

圧倒的な美しさから、あとに残る寂しい余韻まで、、完璧すぎる…。

これが、日本版は風や紙ふぶきはナシに。

舞台の奥に映し出される、扉?窓?のようなところに、ピーターパンに手を引かれ歩いていく、

という演出に変わっていました。

シルヴィアが向かう扉には光が上手に使われていたので、シーンとしては十分綺麗でしたが、

やはり、来日版を知ってしまっていると、少しガッカリ感を隠せません。

(そうは言っても、あり得ないくらい泣きましたがwww)

日本語訳と同様、初見では十分美しいシーンですが、オリジナル版があまりにも良かったのでどうしても、悔やまれる演出変更です。

舞台装置上、難しかったのかな…。

いつか日本版が再演されたら、演出も変更されていると嬉しいな、と思います。

まとめ

来日版のファンだったので、どうしても気になる点はありますが、本当に、いや、ほんとーーーーーーーーーーーーに諦めずに日本版を上演してくれてありがとうございます。

ホリプロ万歳\(^o^)/ 

作品の持つ「テーマ」「現実と空想を行き来する世界観」「名作が生まれるまでの葛藤」そして偉大なる「音楽」。

全て好きです。

この作品に出会えてよかったー!!!!!