- キャスト
- あらすじ
- 感想(ネタバレあり)
- 「♬アストラルジャーニー」
- 初演から王子役の土井裕子さん
- 「肝心なことは目には見えないんだよ」という名言
・王子: 土居裕子 / 加藤梨里香
・飛行士/キツネ:井上芳雄
・ヘビ:大野幸人
・花:花總まり
あらすじ
砂漠に不時着した飛行士(井上芳雄)は、宇宙に浮かぶとある小惑星からきた王子(加藤梨里香/土居裕子)と出会う。王子が暮らしていた小惑星はとても小さく、火山が3つとバオバブの木、1輪の花(花總まり)が咲いているだけ。ある日花と喧嘩をした王子は、惑星を飛び出して旅に出た。いろんな星を巡り地球にたどり着き、不思議なヘビ(大野幸人)や、大切な友達になったキツネ(井上芳雄/二役)との出会いを経験したと言う。
飛行士は飛行機の修理を続けながら王子の旅の話を聞いているうちに持っていた飲み水が尽きてしまい途方に暮れていると、王子が「井戸を探そう」と提案してくる。井戸なんて見つかるはずもないと思いながらも、飛行士は王子と共に探索を始めるが―。
~公式サイトより抜粋~
感想(ネタバレあり)
♬アストラルジャーニーとミュージカル版のメッセージ
1幕ラスト。星々を旅する王子さまが、7番目の星「地球」に向けて旅立つ場面で歌われる「♬アストラルジャーニー」というナンバー。
これが、もうっ!好き!! 大好き!!!
胸がキュー――――――――!!!!!!っとなる。
(このPVの冒頭と、2:02辺りから聴けます)
ミュージカル「リトルプリンス」のシナリオは、ほぼ原作に忠実に作られている。
でもミュージカルとして観た時、特に強いメッセージとして感じたのが、「あなたの探し物(大切なもの)は必ず見つかる」という言葉。(PVのコピーにもなっている)
劇中、オアシスを見つけて、王子さまが地球の豊かさを羨む場面、「でもみんな、何をしているのか分からないでいるんだ…」
飛行士がそう言うと、王子さまは「探しているものは、きっと見つかるよ」と優しく声をかける。(セリフはニュアンスだけ拾っています。一字一句あってはいないかも…)
土居さんの暖かくも力強い声も相まって、ものすごく印象的なセリフだったのだが、改めて原作を読み返してみると…
原作で王子さまは「きっと見つかる」とは言っていなかった!!
マジか!!!
加えて王子さまとヘビの会話で、「どうしてこんなに遠くまで来ちゃったんだろう…」
という王子さまに対して、ヘビは「遠くまで来ないと分からないこともある」と言った。
刺さった(;;)
「花」を残して旅立ったことを、後悔している王子さま。でもそれってやっぱり、実際離れてみないと分からない…ことだよね。
でも、このセリフも原作にには無い。
マジか!!
他にも省かれた、足されたセリフはあるかもしれない。でも、観ていて特に印象に残った2つのセリフが、原作にないことにビックリ!!
でも、あえて台本に足したのだとしたら、ミュージカル版で強調したかったメッセージなのかもしれない…。
そして、このメッセージがギュギュッ!っと詰まったナンバーがこの「♬アストラルジャーニ―」。正確には覚えていないけど、メロディラインだけでも、劇中に何回も登場していた。
今年出会ったミュージカルナンバーの中で、1,2を争うほど好きな曲。
前向きな歌詞なのに、どこか切ない。小さな一歩を踏み出すようで、宇宙が広がるような壮大さがある。
前半部分にある、「さよならの一言で 別れてきたけど この宇宙(ソラ)の彼方 二度とは 会えない」という歌詞。
聴いた時、ドキッ!っとした。原作を忘れてストーリーをさらっていると、
え!?そんな重めの別れだった!?(笑)
と思ったけど…。
でも、考えてみえれば全てのサヨナラに二度と会えない可能性があるよね。
特に、作者のサンテグジュペリは「飛行士」。空の旅に出れば、同時にもう二度と戻って来られないリスクがあるわけで。
そして多分、王子さまも分かっていたんじゃないかな…。「地球」という遠く特別な星は、一度降り立てば渡り鳥では戻れないという事を…。
後半曲調が変わると、そのメロディから宇宙の壮大さと、未知なる出会いへの希望を感じる(好き)。でも音楽のなかに、ちゃんと残っている「切なさ」。
これが「スターウォーズのテーマ」みたいなメロディだったら、王子さま、たくましすぎて笑っちゃうけど。
精いっぱいの勇気と希望で旅に出たんだなって思った。
そして後半の「必ず 見つかる 必ず 何かが」。
私は「旅」という旅をしたことがないし、「旅行」もほとんど行かない。泊りがけなんて、数年に1回くらい。
なのに、感じるこの感覚は何だろう・・・???何度も噛みしめて曲を聴いていて気づいた。この既視感は・・・
「新卒の時、はじめてひとり暮らしをするために実家を出た時の気持ち」!!!
引っ越しの日、毎日通っていた家の前の坂道が急に特別に見えて…、実家を眺めながら「あぁ、もうこの家で暮らすことは無いんだ…」と感じた時の気持ち。
でも、新しい環境、仕事、はじめての一人暮らしが楽しみでもあった。それは嘘じゃなくて、これから何か凄い事がはじまるんだって思っていた…
あの時の「希望と寂しさ」に溢れた「旅立ち」の気持ち。ちょっとした大人なら誰でも味ったことがある感覚なんじゃないだろうか…
そして、新天地でかけがえのない出会いや経験をしたけれど、同時に実家や両親のありがたさ、「別れ」たものの大切さも身に染みて感じてきた。
「遠くに来ないと分からないこともあるさ」
「本当に君の言うとおりだ」って感じです。
あの時見つけたはずのものを、日常の中で忘れてしまっているかもしれない…。気付くと私たちはあっという間に忘れて、飛行士みたいになっている。
今日この日しか観れない舞台と「別れ」たら、私もまた、何か見つけられるかもしれない。そう思って今日も「♬アストラルジャーニー」を聴いている。
そのために必要なものは、全部この舞台の中に詰まっていたはずだから。
初演から王子さまを演じる土居裕子さん
キャストさんの前情報を知らないまま観劇したところ、土居さんはなんと!初演から王子役と聞いて驚いた。
今回e+会員貸し切り講演だったので、講演後に井上さんと土居さんからご挨拶があり、そこでさらに驚かされたのが、土居さんの笑い声。
「あはははは!」って、本当に王子さまの笑い声、そのままで笑ってる・・・!!役作りで声出していると思っていたんだ、私は。
ところが、素で笑う土居さん…王子さまの笑い声そのもの。笑
まんまじゃん!!笑
なぜこんなにも笑い声にこだわるかというと、とーーーーーーーっっても耳に残るんだよね。この笑い声。
一回聞くと、本当に静かなはずの星空の上から聞こえてきそうな笑い声なのだ。
私には、今年3歳になるの甥っ子がいるが、これがまた同じ笑い方する。笑
もちろん声が一緒なわけではないのだけれど、なんだろう?周波数?が同じな訳で。つまり、どこか小憎らしいのに、なぜかつられて笑ってしまう。
そんな「あははははは!!!!」なのだ。
おかげで私は、甥っ子の笑っちゃうお写真が送られてくるたびに、この日の舞台を思い出している。
だから、土居さんのこの笑い声が割と素に近いんだと知った時、なんとなくこの方が初演で王子役に選ばれて、ずっと王子役でいる理由が分かった気がした。
残酷なまでに無垢な笑い、なんだなぁ。
「大切なものは目に見えないんだよ」という名台詞と芳雄さんのキツネ
芳雄さんのキツネ…江戸っ子みを感じるよなぁ。てやんでぇい!!べらぼぅめい!!!っぽくない?笑
王子さまに大切なことを教えてくれるキツネ。やっぱり有名なセリフは「大切なことは目に見えない」…だよね。
今回は「肝心なことは目には見えないんだよ」と訳されてた。
舞台を見る前に、過去2回くらい原作を読んでいて。それでもかなり昔の話で、内容に関しての記憶は本当にザックリ。
小さな星の王子さまが、花と喧嘩して、地球に来て、飛行士にあって、星に帰る。飛行士は王子さまと出会って子どものころの心を思い出す。
みたいな。 ものすごくアバウト(笑)でも、「大切なことは目に見えない」というセリフだけはハッキリと覚えていた。
だから、正直、ものすごく!ものすご~~く大事なセリフだと思ってた。これでもか!というくらい溜めて溜めて、大切に言うんだろうなって思っていたのだ。
でも、違ったわ。
井上さんのキツネの「肝心なことは目にはみえないんだよ」の軽やかさといったらなかった。
まるで、生まれてから今まで、餃子をタレで食べてきた人に対して、「それ、酢こしょうで食べると、意外と美味しいよ」って横から教えてあげてるくらいの軽やかさ(笑)
えーーー!!イメージと違ったぁ!!!
と思ったのだけど、実はより大事だったのはその後に続く「目に見えるものに惑わされてはいけない。大事なのは心でみることなんだ」の方だな、と。
このセリフ、原作読んでいたのに存在も忘れていて… でも、今回セリフとして聞いたとき、マッキーの太い方くらいハッキリとしたペンで、心のメモ帳に書き足されました。
本で読んだ時の心のメモには、「大切なことは目に見えない」=一緒に過ごした時間、手をかけた時間や思い出が何かを特別にする。大切にするんだと書いた記憶がある。 そしてそれは目には見えない。
でも今回、井上さんの「キツネ」セリフ、花總さんの「花」の演技を通して聞いたら相手の言葉や表面的な部分じゃなくて、もっと奥にある気持ちを心で感じてあげてになった。
今この瞬間に見えていることだけじゃなくて、今まで過ごした時間や、相手が自分にしてくれたことの中に肝心なことがある…と。
(これは本当に旦那との日々の掛け合いを考えさせられる…)
当然、本も物語もお芝居も、それを受け取るタイミングで感じること、貰うものが変わる。私の方にそういうアンテナが立っていた、と言ったらそれまでだろう。
それでも、嬉しさを爆発させて飛び回りながらも、照れ隠しするような口調で喋る井上義雄さんの「キツネ」と、誰よりも美しくありながらも意地を張って、一人になって寂しく歌う花總まりさんの「花」だったからこそ、届いたメッセージかな…と思った。
だから、観劇は面白い!!!
2022年1月14日(木)
東宝【ミュージカル リトルプリンス】 @シアタークリエ ソワレ